卓球:デフリンピックでも世界女王に…全日本出場の上田萌


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卓球:デフリンピックでも世界女王に…全日本出場の上田萌

毎日新聞 2013年01月21日 11時08分(最終更新 01月21日 13時25分)

健常者と一緒にプレーし、多くの経験を手にした上田。次の目標は今夏のデフリンピックでの金メダルだ=東京都内で、井沢真撮影

健常者と一緒にプレーし、多くの経験を手にした上田。次の目標は今夏のデフリンピックでの金メダルだ=東京都内で、井沢真撮影

 東京・国立代々木競技場で20日閉幕した卓球の全日本選手権に、聴覚に障害のある一人の女子選手が出場した。昨年5月の世界ろう者選手権でシングルス、ダブルス、団体の3冠を手にした上田萌(23)=日立化成。7月開幕の聴覚障害者のスポーツの祭典「デフリンピック」(ブルガリア)でもメダルが有望な上田は「健常者のトップ選手が集まる大会に出て、いい経験になりました」と充実感を漂わせた。

 今大会は同期のチームメート、中村薫子(23)とのペアで女子ダブルスに出場。思い切り良い強打で果敢に攻める姿は、障害を全く感じさせなかった。コミュニケーションの手段は、手話ではない。相手の口の形から言葉を読み取る「口話」だ。健常者とのペアは初めてといい、「異質なペアでしたけど、少しずつ分かり合えました」と話す上田に、中村は「いつも萌ちゃんの明るさに助けられてますよ」と笑顔で抱きつくなど絆は深い。

 16日の1回戦は3−2で勝利。17日の2回戦は1−3で逆転負けしたが、「健常者の球はスピードが速い。でも、目で動きを見てタイミングを取りました」と着実に糧とした。

 卓球を始めたのは5歳の頃。兄の応援に行った際に、当時6歳の福原愛(24)=ANA=が軽快にラリーを重ねる姿に衝撃を受けた。「愛ちゃんのラリーは、まるで相手と会話をしているようでした。自分も卓球でコミュニケーションを取れればいいなって」。先天性の障害で他人との交流に消極的だった上田は、ラケットを握ることで世界を広げた。

 京都府舞鶴市出身。地元の日星高時代にも全日本選手権の女子ダブルスに2回出場。今回は6年ぶりの全日本だった。東京富士大を経て12年春に入社した日本リーグ1部の日立化成で飛躍。同年5月の世界ろう者選手権で3冠に輝いた際は、福原から「おめでとう」と祝福されたという。来年は「予選を突破してシングルスにも出たい」と思いは膨らむ。

 4年前のデフリンピックは女子シングルスで銀メダル。世界女王の看板を下げて臨む今夏は「他国の選手から追われる状況でも力を発揮したい」。再び世界の頂点に挑む。【井沢真】