聴覚障害の大学生79人 日常写真展…14日から


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聴覚障害のある大学生79人を4年間かけて撮影した鳥取聾(ろう)学校の元教諭高田啓一さん(65)(鳥取市雲山)の写真展「夢を追いかけて」が11月中旬、鳥取市内のギャラリーなど2か所で開かれる。被写体の学生たちは、モノクロ写真の中で見せるはつらつとした笑顔の裏で、世間の障害者に対する無配慮に苦しんできた。高田さんは「写真を通じて大学生の思いを伝え、一人でも多くの人に聴覚障害者のことを理解してもらいたい」と力を込める。(加藤あかね)

◇鳥取聾学校元教諭、4年かけ15都府県で撮影
「差別のない社会にと願う大学生がたくさん協力してくれた」と話す高田さん(鳥取市片原の中電ふれあいホールで)

 高田さんは1976年から33年間、数学を教えた。趣味でカメラを始め、80年から雑誌や新聞社のコンテストに出品。翌81年、同校に写真部を設立し、退職まで28年間、顧問として生徒を指導した。

 2008年頃、別の写真展のために、大学生になった教え子を撮影した時に、「大学時代、手書きやパソコンによる文字通訳などのサポートがなく苦労した」と聞かされた。ほかの若者がどのような学生生活を過ごしているのか、との思いが芽生えたことが〈大学生シリーズ〉の撮影につながった。

 退職直前の同年10月に広島で撮影を始め、人づてで全国の大学生を紹介してもらい、撮影終了の12年11月までに、宮城、広島など15都府県を訪問。教諭時代に生徒に習った手話で、意思疎通を図り、好きな場所で、好きなポーズをとってもらい、住んでいる環境が分かるような風景とともにフレームに収めた。その後、各学生が引き立つカットを選んで焼き付けをするなど開催直前まで準備を重ねる。

 「ほとんどの学生が夢を持って大学に入っている。健常者より大きな夢を持っている人だっている」。大学生に聴覚障害者の将来を背負う人になってほしいとの願いを込め、テーマは「夢を追いかけて」とした。

 ただ、撮影の際に高田さんが手渡されるなどしたアンケートから浮かび上がる現実は厳しい。

 仙台市の女子学生(撮影当時)は、幼稚園で「高音難聴」と診断され、中学3年生の頃から徐々に耳が聞こえなくなり、大学に入ってから手話を学んだ。「アルバイトを探したが、スーパーのレジ打ちが決まるまで、5回も採用を断られた。どれも聴覚障害があることが理由だった。社会に出ることの厳しさ、障害を理由に断られるつらさを実感した」とつづる。授業中、文字通訳をしてもらっている時に、先生から「(文字を打つ)パソコンの音がうるさい」と注意されたこともある。

 それぞれの作品にはモデルの大学生がつづったアンケートの内容も添えるつもりで、高田さんは「みんなずっと苦労の連続で、大変な思いで過ごしている」とその気持ちをおもんばかる。

 今月11日、全国初となる県の手話言語条例が施行された。高田さんは「世の中は絶対変わる。条例はその大きなきっかけになる」と期待を込めた。

 写真展は、鳥取市若桜町の「ギャラリー柏葉」(11月14日~19日の午前10時~午後6時、無休)と、同市片原の「中電ふれあいホール」(同月15日~20日の午前9時半~午後5時半、月曜休館、最終日は午後4時まで)で開催し、合わせて75点を展示する。入場無料。
(2013年10月30日 読売新聞)

http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/tottori/news/20131029-OYT8T01434.htm